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女性に対していつも優しい彼。だけど“天才肌タイプ”なら求めてはいけないコトもある

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【うるおい女子の映画鑑賞 第40回『エゴン・シーレ 死と乙女』(オーストリア・ルクセンブルク・2016年)】

 

「女性」の視点で映画をみることは、たとえ生物学的に女性じゃなくても日常では出会わない感情が起動して、肌ツヤも心の健康状態もよくなるというもの! そんな視点から今回は、20世紀初頭に頭角を現し、生命力がむき出しになったような力強い筆使いであのクリムトにも認められた画家の半生を描いた映画『エゴン・シーレ 死と乙女』(オーストリア・ルクセンブルク/2016年)を紹介します。

 

 

 

 

|ストーリー

 

1910年、クリムトの勧めもあり美術アカデミーを退学したエゴン・シーレは、自宅の一室で実の妹ゲルティの裸体画を描いては画家仲間と芸術論を語り合い「新芸術集団」を結成します。

 

 

やがてクリムトの紹介で、彼のミューズとなるヴァリと出会い芸術家としての実り季節を迎えますが、第一次世界大戦が勃発したことでふたりの蜜月時代にもかげりが見え始めーー。

 

 

 

 

|天才が故の孤独と冷淡

 

女性の裸体を描き、ときには少女もそこに含まれていたことから、シーレは幼児性愛者という誹謗中傷や、作品を芸術ではなくポルノと称される屈辱を受けながらも天才画家としてのその生を、ある種強迫観念かのように、したたかな冷淡さで生ききる様が描かれます。

 

 

実際のシーレがどうであったか、は今ここではおいておき、作品中でのシーレについていえば、「こういう軽薄なモテ男いるいる!」なのです。彼のような才能はほとんどの輩にはないにせよ、何かしらの分野に秀でていて、かつその分野で開花している男性というのはモテるし優しいけど、ある一線からぴしゃりと軽薄で合理的なところがあったりしませんか(はい、独断と偏見です)? 自らの才能と使命を理解した人間は孤独で、その使命を全うするためにはときに冷淡だったりするのです。

 

 

 

|天才、または天才肌の彼に”普通の恋愛”なんて求めてはいけない

 

シーレの絵には見る者に「なんかやばい」と思わせる生々しさと、忍び寄る死の匂いを瞬時に漂わせる力があります。その才能を嗅ぎつけた美しい女たちがモデルを買って出てきては、ここそこに色恋の多くがあったことは想像に難くありません。映画のなかで彼は、女性に対してはいつも優しく、彼女たちに対してきっぱりと拒絶の態度を示したりすることはまずありません。多くの浮名を流したというのも納得の、最大公約数にモテる男の所作そのもの。

 

ですが色恋と愛とは別の話。凡人レベルの発想で彼を独占したり、結婚を求めることはそこではご法度です。ヴァリもそれを重々理解していて、彼のソウルメイト兼ミューズという役割を果たしていましたが、やはり彼女も女。知らず知らずのうちにシーレを凡人世界の枠にはめようとしてしまい、2人の関係に致命的なヒビが入ってしまうのです。

 

 

 

 

”普通の人生”や”普通の結婚”を望んでいるのなら、天才肌の男が生み出すもの(芸術でもお金でも知識でも)を享受しつつも、ぜひ距離は保っておきたいもの。シーレのように愛や死を魂のレベルで描き出してしまう天才が、人を愛するエキスパートだとは限らないのも事実なのですから。

 

ちょっと“すさんだ”感じのレビューになりましたが、劇中登場する数々のエゴン・シーレ作品は圧巻! 愛、死、肉体、感情、孤独、いろんなボタンがぐいぐい押されるエモーショナルな一本ですから、週末のひと時ぜひ鑑賞してみてくださいね。

 

 

text:kanacasper(カナキャスパ)(映画・カルチャー・美容ライター/編集者)

編集を手がけた韓国のカリスマオルチャン、パク・ヘミン(PONY)のベストセラー メイクBOOK待望の第2弾『わたし史上いちばん”盛れる”♥ 秘密のオルチャンメイクⅡ』(Sweet Thick Omelet/DVD付/¥1,500・税別)が好評発売中。

 

記事内image出典:映画『エゴン・シーレ 死と乙女』公式サイト


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