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芸術家・村上隆が描く未来

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©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 村上隆氏が「SUPER FLAT」で生み出してきたキャラクターは、影に毒を持つものの表面的には可愛らしく描かれている。今回の映画「めめめのくらげ」でも “くらげ坊” のように愛らしいキャラクターもいるが、全体的に見ればどことなくおどろおどろしい風貌だったり、奇妙な姿をしたものが多い。

「めめめのくらげ」完成披露試写会には村上隆監督をはじめ主要キャストが登壇。(右から)くらげ坊、村上監督、四人衆・青竜役の窪田正孝さん、姫香役の天宮咲さん、正志役の末岡拓人さん、直人役の斎藤工さん、るくそー。

 これらのキャラクターはまるで、村上氏が子ども時代に触れてきた「ウルトラマン」シリーズの怪獣や「ゲゲゲの鬼太郎」の妖怪のよう。かわいいだけではない異形の生物(キャラクター)たち。彼が震災後に描き、カタールで公開された「五百羅漢図」(2012年)に登場する異形の修行僧たちにも似た印象を受ける。

 

監督を務めた村上隆さん。「ものづくりとしての映画ははじめて。製作現場の都合や段取りに関係なく、観客のみなさんと同じ視点で作ってきたので、これ以上できないという自信作になった」と語った。

 10年以上実現しなかった映画の企画がここへきて急速に進んだ理由には、ストーリーにも描かれている「震災」が大きなきっかけとなったようだ。当初はまったく異なるストーリーが企画されていたが、震災が起きて日本社会のドグマがすべて表面化したという。『(震災により)差別やヒエラルキー、理念といったものの境界線がさらにハッキリした事を、いまの子どもたちと共有し、そうした境界を乗り越えなければならない、というメッセージが必要だと思った』と語る村上氏。劇中では、大人たちは何もできない存在として描かれ、自ら考えて行動する子どもたちが物語を紡いでいく。

 本作はすでにパート2も製作中であり、さらにテレビシリーズ化の希望、さらに10年以上作り続けたいとも語っている。彼が「めめめのくらげ」を通して、日本に、そして世界へ何をメッセージしていくのか。これから先も楽しみだ。

 

めめめのくらげ
2013年4月26日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他 公開中

©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

【STORY】
津波で父(津田寛治)を亡くした少年・正志(末岡拓人)が母・靖子(鶴田真由)とともに叔父・直人(斎藤工)が暮らす街に引っ越してくる。その新しい家に、見慣れない段ボールを見つけた正志。その中から出てきたのは、くらげのような不思議な生き物。どこか愛らしいその生き物を「くらげ坊」と名付け、次第に仲良くなっていく。リュックにくらげ坊を連れて転校先の小学校に行くと、そこでは他の生徒たちも、大人には見えない不思議な静物= “ふれんど” を連れていた。いったい誰が何のために……そして、“ふれんど”とは何なのかー。困難な時代に生きる子どもたちが問題に立ち向かって行く姿を描くSFジュブナイル。

監督:村上隆
CAST:末岡拓人、浅見姫香、窪田正孝、染谷将太、黒沢あすか、津田寛治 鶴田真由、斎藤工
配給:GAGA
http://mememe.gaga.ne.jp/#/home

 

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