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FUJI TATE P―刺繍が魅せる表情

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プロダクトブランド「FUJI TATE P」。刺繍家・藤田哲平氏が生み出すビーズで作られたアクセサリー「PENTA」の制作工房にお邪魔してお話を伺った。

 幾何学模様か、または顕微鏡の向こうに広がる細胞の世界を見ているかのような、引き込まれる美しさ。“肌に刺繍をさすように創られたビーズアクセサリー”「PENTA(ペンタ)」。刺繍家・藤田哲平さんの手仕事によってひとつずつ丁寧に創られている。

 「FUJI TATE P」のプロダクトデザインをはじめて3年目。もともと刺繍のデザイナーとしてビーズをずっと使ってきたものの、“布にさす刺繍”に飽きてしまった。そこで、好きだった立体デザインにビーズを使えないかと思ったことがきっかけで、「PENTA」のシリーズが生まれる。2012年6月に新宿伊勢丹の催事で発表したファーストコレクション“OLYMPIC”から、すでにコレクターもつくほどの人気に。
『新色を出したら必ず連絡ください、と言って頂ける方も。ドイツの建築家の方で全種類買ってくださった方もいました。その方はバングルをオブジェとしてお部屋に飾ってくださっていて、製品を送るたびに「うちのリビングにまたひとつ増えました」って写真を送ってきてくれたりします(笑)』

「3D bangle」は制作に長時間かかる大作。各色5体ずつの限定生産で、実はデザイナーにしかわからない部分にシリアルが埋め込まれているのだそう。

 奇しくも今、タイムリーな“OLYMPIC”というコレクション名について伺うと、自身のデザインの原点とも思える嗜好の話に。
『もともとオリンピックの、開会式のマスゲームが大好きなんです。他意はなくデザインをしたバングルが、たまたま“五輪”の色と配置にそっくりになったりもしましたが(笑)。東京オリンピックが取れたらいいな、っていう思いも少なからずあり、2年目のコレクション名を“Good Morning,TOKYO”としました』

「3D Footboll Ring」 一般的なスワロフスキービーズだと光りすぎてしまうため、藤田氏はオーストリアから直接仕入れている2mmのビーズを採用。この細かな1粒1粒から、上品な輝きが放たれる。

 強力なテグスに極小のビーズを通していく作業は、あまりにも細かすぎて太陽光の下でしか作業ができないほど。非常に繊細に見える作業だが、リングやネックレスのトップなどは短時間で制作できるものがほとんどだという。

 細かなカットが施されたビーズは、光の当たる角度によって本来のビーズの色とはまた違った表情に見えることも。そこにもストーリーを感じるのだそう。
『角度によって見える色みが違う、その感じがアスファルトの照り返しに似ているなって思うんです。それが“Good Morning,TOKYO”のコレクションにも反映されているかと。そういうストーリー性はすごく大切にしていますね』

 ロマンティックで、繊細。でもそこには、揺るぎない強い芯。この「PENTA」のほか、ガラスビーズで空中に刺繍をさす「ERIKA」のモビールも、すべて彼の手仕事。そこにもこだわりが?

ガラスビーズを多面体に組んだモビール「ERIKA」。そのものの存在だけでなく、落ちる影までも愉しめる。

『自分は職人ではなくデザイナーだと思っているので、全部を自分で創るべきだ、とは思っていないんです。ただまったく知らないところに(制作発注を)出すのは抵抗があって。大きなメゾンの製品は、すべて自社の工房で創られていますよね。規模は違いますが、自分もそういった志を持ったブランドでありたいなと思っています』

刺繍家 藤田哲平
中国雲南省で様々な刺繍技法を学び、2010年より始動。
古典にとらわれず、現代のモダンなライフスタイルを提案する。
作品は【ERIKA】【SMOCK】【PENTA】等
www.fujitatep.jp

 

photo :Osamu Kurihara(4×5 SHI NO GO)


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