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“粧い”の美とその原点を訪ねて

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ポーラ美術館で開催中の『ポーラ美術館10周年記念展「美へのまなざし」』では、膨大な化粧道具のコレクションを3期に分けて紹介。その最終期に「20世紀の化粧- アール・ヌーヴォーからアールデコ」が行われている。この時代は、化粧が大衆のものとなった時期。まさにメイクアップの”原点”を観ることができる。

ガラス工芸作家ルネ・ラリックのダリアと名付けられた化粧瓶。彼の作品が絶大な人気を博したことで化粧は浸透しはじめる。

 化粧の歴史はとても古い。何万年も前に人々が魔除けのために使っていたものを、いまの“化粧”と一緒にするのは少々難しいが、紀元前のエジプトでは現在とそれほど変わらない化粧がすでに存在していた事がわかっている。それ以降、中世ヨーロッパではキリスト教の影響から化粧は公には認められなくなり、一部の特権階級のものとしてその文化を繋いだ。

 再び誰もが化粧ができるようになるのは、19世紀末頃から。徐々に合成香料の開発が進み、安価で優れた香水が次々に誕生。クリスタルガラスの化粧瓶や銀製の鏡といった化粧道具が市販されるようになる。当時、香水瓶の中ではとりわけガラス工芸作家のルネ・ラリックがデザインした優美な香水瓶が人気を集めた。

 第一世界大戦を機に女性の社会進出が進み、外出先でも化粧直しができるコンパクトやリップスティックが登場。さらに化学技術が進化し、さまざまな化粧品が量産され、化粧は大衆のものになっていく。パッケージも豪奢なものから、手にしやすく商品名などを目立つようにあしらったものになり、私たちが現代で目にするような化粧品に近づいていった。百貨店などでの店頭販売に加え、通信販売カタログにも掲載され、雑誌や広告でも美容関係の内容が見受けられるようになる。
 こうして “粧いを楽しむ” 現代の化粧文化が開花したのだ。

1930年代アールデコの時代、ボストンバッグに入った豪華な化粧セット。旅先では化粧台にも早変わりする優れものだ。

 箱根の原生林に囲まれた自然豊かな地に佇むポーラ美術館。同館のコレクションにはモネやルノワール、藤田嗣治などの名画を多数擁しており、ポーラの創業二代目である鈴木常司氏が生涯をかけて収集したものだ。実はこのコレクション・9,500点のうち、なんと6,700点が化粧道具のコレクション。本展では古今東西の化粧文化をたどる企画展示を行っており、すでに終了してしまったが Ⅰ期 では「ヨーロッパの香りと化粧- ロココからアールヌーヴォー」、Ⅱ期 には「江戸の化粧- 婚礼化粧道具と髪飾り」と題され、貴重な品々が惜しみなく公開されてきた。

 「20世紀の化粧- アール・ヌーヴォーからアールデコ」。箱根まで足を伸ばしても、一度は見ておきたい!

カワイイキャンドル型の香水瓶。今でもクリスマスに素敵な男性からプレゼントされたらうれしいかも♬

 

text::chibahidetoshi

 


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