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【インタビュー】フォトグラファー・井上由美子さん

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ーカメラを手にしたけれど、いったいどうしよう? という感じですね。
専門学校を出たワケでもないので、どうやって学べばいいかわからなかったんです。フォトグラファーの方の直アシにつくにも経験はないし。しかし、そこにも出会いがあって。
大学時代にバックパッカーもしていたのですが、旅先のタイで藤代冥砂さんに偶然出会ったんです。まだ「SWITCH」のバイトをする前のことで、私もカメラは持っていたものの、全部 “オート”で撮っていた。その機能が壊れてしまったタイミングで、藤代さんが現れた。そこではじめて、“マニュアルフォーカス”に設定を変えれば撮れるんだよ、ということを教わったんです…そんなことすら知らなかった(笑)。

ー旅先でカメラが壊れたタイミングで、有名写真家に出会うなんて!
いま思えばスゴいことですよね。そこから藤代さんと仲良くなり、帰ってからも他愛ない手紙のやりとりなどを重ねたりしていました。そうやって、これまで出会った人々に相談したりアドバイスを頂きながら、フォトグラファーになるためにまずはスタジオに入ることが一番良いのかな、と。なかなか簡単には入れませんでしたが、作品を撮り溜めて、面接に行って…を繰り返し、ようやくスタジオ所属にこぎ着けた、という感じでしたね。

ーなるほど…まさに導かれるようにフォトグラファーになられたんですね。
 そうして着実に経験を重ねてこられたご自身が、写真で「表現」するにあたって、いつも根底にあるものはなんでしょう?
たぶん“自分の中に流れ続けている何か”があって、無意識のうちにこういう作風になっちゃう、というものはあると思うんですが、とにかく意識していることは、常に自分をゼロにすることですね。
特に20代の頃は、まだ若かったから「自分の写真を撮らなきゃ」という自己主張があったと思うんです。目の前に被写体があり、流れる空気があるのに、それをぐにゃっと曲げて自分のほうに向かせないと気が済まない、という時期がありました。それがうまく出来ないと落ち込んだり、自分には才能がないと考えたり……。
でも今、自分にスタンスがあるとしたら、どれだけ自分をゼロにできるかな、どれだけ心を開いて目の前の人のことを見られるか、など、まずは自分がその対象者の気分を感じられる人になる。これはたぶん、意識しないと出来ないことだと思うんです。
自分が撮りたいものだけを撮っていたのでは、すべてを引き出すことは出来ない。これは何度も失敗を重ねて学んだことです。自分をゼロにする=何も考えてない、ということではなくて、最終的に、撮った作品の中には必ず自分らしさが残っているはず。自分の個性や感覚のことは信じています。

 

井上さんが感じる「きれい」とは……? >>>


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