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「愛ってなあに?」に愛はある!映画『二重生活』のポエティックな愛に酔う

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「迷いのなかにいるということこそ、愛の瞬間だと思う」

週末に、とある映画を観たせいで「愛ってなあに?」という乙女全開な疑問が頭をグルグル巡っている。

その映画は、気鋭の中国人映画監督、ロウ・イエの最新作『二重生活 』。そして冒頭のことばは、インタビューでロウ・イエ監督がわたしに言い放ったことば。

 

 

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|愛する夫がもし、別の家庭で二重生活を送っていたら――?

 

優しくてイケメンな夫とかわいい娘に恵まれ、広くてモダンな家政婦がいる家で暮らすルー・ジエ。誰もが羨むほどに幸せで完璧に思えた彼女の日常は、ある女子大生が巻き込まれた交通事故を起点に、容赦なく崩れ落ちていく。ママ友だと思っていた女が実は夫の愛人で、夫は2つの家庭で二重生活を送っていたという衝撃の事実が明るみになったとき、彼女はそれとどう向き合い、また夫、愛人はどのような行動に出るのか。それぞれの愛を求める男女3人が生み出す歪みは、さらなる歪みを誘発し、やがて物語は残酷な結末へと向かっていく――。

 

 

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ストーリーだけ聞くとドロドロなメロドラマだけど(それはそれで充分楽しいのだけれど)、実はこれ、「愛」についての物語。

 

原題のMYSTERY(ミステリー)とはよく言ったもので、なるほど、人間のこころこそがミステリーなのだという、「二重生活」というプロットのキャッチーさを逆手に取った、愛の深部に迫った傑作だった!

 

正直最初は、二重生活を送ってさらに若い女と浮気している夫(ビョーキ!)、本妻になに食わぬ顔で近づく愛人(怖い!)、愛をコントロールしようとする本妻(痛い!)、と誰にも共感できなかった。だって、全員人として間違っているから。だけど、ふと気づいた。

 

皆、それぞれの”愛”を求めて必死なのだ、と。

 

 

 

|「愛ってなあに?」 禅問答のはじまり

 

 

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【映画監督:ロウ・イエ氏】

 

 

「この作品では、誰もがこころが満たされない不安定な状況に置かれていますよね。満たされないから新しい刺激を求めていくのだと思う。だけどそういう困惑そのものが、愛のひとつの形という風にも言える」

 

と監督は言うけれど、愛を求めること、愛を感じることそのものが「愛」ということ?

 

「ヨンチャオ(夫)がルー・ジエ(妻)と別れてサン・チー(愛人)の家に行きますよね。その車のなかで彼はサン・チーへの愛を感じている。そして、ルー・ジエは夫との離婚を決めた後、夫と愛人とその息子がスーパーで買い物をしているところを目撃してしまうのだけれど、彼女はあのとき、ヨンチャオに対しての愛を感じているんだ。愛というのは、そういう瞬間に生まれるものだと思う。逆にヨンチャオは、サン・チーの家に着いて実際に彼女の顔を見たとき、そこに愛はないかもしれないね」

 

 

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愛とは絶対的なものではなく、その場で移ろっていくということか……。泣きそうなわたしを見かねた監督は

 

「(笑)愛というのはどいうものなのか僕にもわからないけれど、いろんなところにそういった”瞬間の愛“が生まれるし、愛が生まれるべきところにないかもしれない。いろんな可能性があると思うんだ」

 

と、冒頭のことばで締めくくった。

 

 

短絡的、楽観的な情報にわたしたちは囲まれていて、それが幸せへの近道とでも言うような風潮がある。だけど、それって難しい。わたしたちは日々迷って、悩んで、「愛」に困惑する。映画はそれをそのまま包み込んでくれると同時に、「そんなの浮世の小さなことよ」と達観したメッセージも匂わせてくれる。

 

1分間で笑わせてくれるTVもいいけれど、ときには映画で「愛」について考え悩み、女のサガに溺れてみるのも詩的でいい。

 

お正月明けに、同じく愛の刹那性を描いた中国映画『薄氷の殺人』(よかったらレビューをblogで)を観たものだから、2015年の開始とともに、愛について、女という生き物について考えてばかり。うん、悪くない。これが愛の浮遊感か。

 

 

 

『二重生活』(中国、フランス/2012)
新宿K’s cinema、渋谷アップリンクほか全国順次公開中

 

 

監督、脚本:ロウ・イエ
脚本:メイ・フォン、ユ・ファン
出演:ハオ・レイ、チン・ハオ、チー・シー
http://www.uplink.co.jp/nijyuu/

 

 

text:ウエダカナ(映画・カルチャー・美容ライター/編集者)
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