毎日のことだからこそ知っておきたい! 遺伝子組み換え食品って何が問題なの?

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「この商品は遺伝子組み換え○○を使用していません」
スーパーなどで豆腐やポテトチップ、ポップコーンなどを購入するとき、商品のパッケージにこの文言が記載されているのはみなさんもご存知かと思います。でも、この“遺伝子組み換え”って何を指すのか、そしてそれが健康に及ぼす影響についてもご存知でしょうか?

 

“遺伝子組み換え”は英語で直訳すると「Genetic Modification(遺伝子操作)」。自然界でも遺伝子は変化していきますが、遺伝子組み換え食品の“遺伝子組み換え”はこれを指すものではなく、“人が強制的に遺伝子操作をすること”(*)を指します。

*…例えば魚の遺伝子を大豆に挿入するとか、バクテリアの遺伝子をジャガイモに挿入するなど、自然には絶対に起こり得ない遺伝子操作のこと

 

 

そう聞くと「なんとなく身体に良くないのかも…?」と単純にイメージしてしまいそうですが、この遺伝子組み換え食品の真実を追ったドキュメンタリー映画『パパ、遺伝子組換えってなぁに?』が、2015年4月25日(土)より公開されます。

 

この映画の監督は「3人の子どもを持ったことで“食”について考えるようになった」というジェレミー・セイファート氏(以下、ジェレミー)。子どもたちの「食の安全」を守るため、世界各国で“遺伝子組み換え”についてアポ無しインタビューを敢行したという彼に、今回は作品について、そして食の安全についてをテーマにインタビューさせてもらいました。

 

 

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【映画監督:ジェレミー・セイファート氏】

 

 


 

 

—この映画を、ご自身の家族の問題として撮った経緯を教えてください

 

ジェレミー「普段家族で食べている食品について調べると、アメリカの食品業界の現状は、まさに『農薬を作る化学会社が私たちに食べ物を与えている状態』でした。そしてその状況に、もちろん私の子どもたちも巻き込まれていた。親として何かしらの対策を講じたいと思い、ドキュメンタリーの題材として選んだのです」

 

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—今回の調査で知ったことで、一番ショッキングだったことは何ですか?

 

ジェレミー「農薬として登録されている遺伝子組み換え食品があること。また、農薬を作る化学会社が米国の多くの農家たちを統制していること。そして、限られた種類の作物を単一栽培する“産業化された農業”により、この100年間で世界中の種の持つ多様性が大きく損なわれてしまったことも衝撃的でした」

 

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—ご自身の子どもたちを映画に参画させたことで得られたことは何かありましたか?

 

ジェレミー「子どもたちの持つ“センス・オブ・ワンダー(不思議に思う感覚)”を取り戻すことができました。世の中に起こっている問題は、この不思議に思う気持ちが欠如していることが原因だと考えています。また、『子どもたちにとって何が一番大切か?』という問いにいつも立ち戻りながら、映画を製作することができました。さらに自由な子どもたちに影響を受け、撮影に想像力も発揮されて、遊び心を取り入れることができたと思います。トウモロコシ畑をガスマスクを付けて探索するシーンなど、作品のビジュアル面にも彼らの想像力が反映されています」

 

 

 

—撮影や上映に関して何か外部からの反対や圧力はありませんでしたか?

 

ジェレミー「直接的な圧力や告訴などはありませんでした。しかし大手メディアの多くはGMO推進派です。この作品は雑誌『New Yorker』には酷評されましたし、その批評は遺伝子組み換えを推進する『モンサント社』によって拡散されました。上映に関してはっきりと分かるような圧力はありませんでしたが、前作 『Dive!』を上映した映画館が直前になって、この作品の上映を取り止めることもありました」

 

 

 

—50年後、お子様が親になった頃に、どのような環境であって欲しいと思いますか?

 

ジェレミー「種の多様性も大事ですが、土壌や水の品質も大切なポイントです。農薬会社の推進する農業は、従来の肥料と同じように見せていますが、土の健康や肥沃さを全く考えていません。このままだと農業ができる土壌が失われかねません。土壌が良くなっていくような農業が推進されるべきです。現在、土壌品質の維持や向上に取り組んでいる農家は、あまりにも少ないです」

 

 

 

—遺伝子組み換えや農薬会社の推進する農業に対抗する有効な対策として注目しているものはありますか?

 

ジェレミー「いくつもあります。アメリカ国内で急激に増えている小規模なオーガニック農業やファーマーズマーケット、CSA(Community Supportive Agriculture::コミュニティが支援する農業)、パーマカルチャー、シカゴやニューヨークなどの都市部ではじまっているバーティカル・ファーミング(垂直農法)などです。遺伝子組み換えを推進するグループはこうしたオーガニックの流れよりも、さらに早く広く作物を流通させるべくTPP などを使い先手を打とうとしていますが、食の安全を優先するならオーガニックな流れにもっとスポットを当てていくべきだと思います」

 

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—現在、家庭での食生活はどんなものでしょうか? 子どもたちへの食育に関してはどのようにお考えですか?

 

ジェレミー「家族で食べるすべての食品は、遺伝子組み換え食品 を含まないだけでなく、オーガニックのものを選んでいます。家族全員甘いもの好きですが、お菓子もオーガニック食品を選ぶようになりました。私は“遺伝子組み換えに反対”というよりも“オーガニックな流れを応援”しています。何かに反対の声を挙げることよりも、何かに賛成することの方が、強力だと考えていますので。また、家族の健康のためだけてなく、地球環境にとってもよりよい選択が大事であると子どもたちに教えています。子どもたちがハロウィンの日に隣家からキャンディーをもらってきたときは、手作りのおもちゃを用意して、もらってきたお菓子とおもちゃを交換しました(笑)」

 

 


 

ジェレミーによれば、遺伝子組換え食品の割合が非常に高いアメリカでは、遺伝子組み換え食品の出現と共にガンや白血病、アレルギー、自閉症などの慢性疾患が急増しているのだそう。この現象は「遺伝子組み換えによるもの」と断言できるわけではないものの、健康面でも危険である可能性は十分指摘できるはずです。

 

この『パパ、遺伝子組換えってなぁに?』は遺伝子組み換えについてわかりやすく学べるだけでなく、未来をつくる「食品」のドキュメンタリー。だからこそ、ぜひチェックしてみていただきたい作品なのです。

 

 

 

 

映画『パパ、遺伝子組換えってなぁに?』
2015年4月25日〜 渋谷アップリンク、名演小劇場ほか、全国順次公開

 

 

■監督:ジェレミー・セイファート

■出演:セイファート監督のファミリー、ジル=エリック・セラリーニ、ヴァンダナ・シヴァ

 

2013/アメリカ、ハイチ、ノルウェー/カラー
配給・宣伝/アップリンク

 

 

text :nao ( Remember The Lemon )

ロースイーツ・パティシエ。マンハッタンのレストラン pure food and wine、カリフォルニアの料理学校 Living Light で調理技術を学ぶ。『ローフードBASICS』翻訳&『はじめてのローチョコレート』共著。2012年より都内でワークショップやワンデイカフェなどイベントを開催している。
http://www.rememberthelemon.net


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