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感情表現豊かな女vs怒ると黙りこむ女

感情表現豊かな女 vs 怒ると黙りこむ女。愛されるのはどちらの女性ですか?

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【うるおい女子の映画鑑賞】 第61回『こわれゆく世界の中で』(2006年・英=米)

 

「女性」の視点で映画をみることは、たとえ生物学的に女性じゃなくても日常では出会わない感情が起動して、肌ツヤも心の健康状態もよくなるというもの。そんな視点から今回は『こわれゆく世界の中で』(2006・英=米)を紹介します。ダメ男を演じさせたら右に出るものはいない英国俳優、ジュード・ロウの主演作です。

 

 

 

|ストーリー

 

美しい恋人リヴ(ロビン・ライト・ペン)とその娘ビーと暮らしている建築家ウィル(ジュード・ロウ)。共同経営者のサンディとともに都市の再開発計画を進める彼は、ロンドンのキングス・クロスに新しいオフィスを構えたばかりでした。そして、治安が悪いことで有名なこの地区への引越しが、順風満帆かのように見えたウィルの世界が壊れる引き金を引くことになります。

 

出典:IMDb.com

 

オフィスの引越しが済んだその日に窃盗事件に巻き込まれたウィルは、ひょんなことからボスニアの未亡人アミラ(ジュリエット・ビノシュ)に出会います。いけないと頭ではわかっていながらも、ウィルは恋人とは正反対のタイプのアミラに強く惹かれていきます。

 

 

 

|相対する性格と見た目の2人の女に惹かれる男

 

ウィル、そしてリヴとその娘ビーは3人で暮らしていますが、ウィルはビーの実の親ではありません。リヴは少し手のかかるビーに付きっきりなため、ウィルはふたりの間に上手く入り込めない疎外感を感じています。すれ違いや不満をお互いに抱いても、ウィルとリヴは大声をあげて感情をぶつけ合うことはしません。お互いに思うところがありつつも、毎日をつるつるとした氷上を歩くかのようにやり過ごしているのです。

 

出典:IMDb.com

 

ウィルは薄情さを礼儀正しさでコーティングしたような男で、リヴは「怒りや感情を内に秘める」というやまとなでしこタイプ。まるで2人の間を見えないガラスが遮っているかのような関係なのです。

 

一方、ひょんなことから出会った未亡人アミラは「喜怒哀楽の感情表現が豊か」です。

 

出典:IMDb.com

 

悪い仲間たちに囲まれて犯罪に手を出す息子もいるアミラですが、親子関係はとても良好。もちろん、女手一つ、亡命先の英国で生活していくために毎日肩肘はっていることは明らかです。

 

自然体でかつダイレクトに感情を伝えてくるアミラにウィルが惹かれたのは、リヴとの関係の反動なのは明らか。2人の女性はまったく違うタイプの性格だし、見た目だって大きく違います。

 

 

 

|“感情表現が豊かな女”と“怒ると黙りこむ女”はどちらが愛される?

 

アミラが見せる“女の顔”と“母の顔”の切り替えは絶妙で、なんとも言えない切なさを感じさせます。夫に先立たれ、息子を連れてボスニアから英国に亡命した彼女の孤独感、女としての輝きはウィルの求愛によって救われます。そのときの彼女の少女のような恥じらい、張り詰めていた緊張感がほどける安堵感には嘘はないはず。しかし、同時にそこには息子を守るためなら時に悪女の仮面をも被ってしまう母親としての覚悟と強さも存在し、女性という生き物の奥深さや抱える矛盾や葛藤を見事に体現しているのです。

 

一方、男から見て“隣に連れて歩きたい女”の代表とも言える容姿端麗なリヴは仕事も家事も完璧にこなす女性。あまりに完璧すぎて男に飽きられるタイプともいえるのですが、彼女の場合は娘を第一に考えすぎて、その過保護ぶりが娘にも良くないだけでなく、ウィルに疎外感を与えてしまっています。そして、ウィルが声を荒げて喧嘩に発展しそうな場面では、黙り込んで心のシャッターを降ろしてしまいます。そんな完璧主義で奥ゆかしさを発揮するタイプの女性は意外と日本人には多いのではないでしょうか?

 

概して男性は女性よりも楽観主義の傾向があり、弱さやダメさ加減だって男性の目には“可愛げに映る”こともあります。男性との向き合い方に課題を感じているなら、果たしてどちらのタイプが愛されるのか、ぜひ作品を見ながら思いを巡らせてみてくださいね。(とは言え性格は急に変えられるものではないですし、弱さやダメさ加減が過ぎても欠点にしかなりませんし…。結局のところ「どちらが愛されるのか?」は相手の男性によるところが大きいですよね?!)<text: kanacasper(カナキャスパ)>


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