newsニュース

瀬戸内国際芸術祭レポート vol.1

Twitter
LINEで送る

 

瀬戸内海に浮かぶ島々を舞台に繰り広げられる、瀬戸内国際芸術祭2013。現代アートと島の豊かな自然や風土が折り重なり、史上最高の体験を与えてくれる世界にまたとない芸術祭だ。会期も残りわずかと迫る中、秋晴れのさわやかな風に包まれた島の旅レポートをお届け!

 おだやかな波に囲まれ、地上の楽園とも思える温暖な気候に恵まれた瀬戸内海の島々。残念ながら高齢化により過疎が進んでしまったこの地の美しい風土や固有文化を守るべく、アートによる地域活性を目指した取り組みとして「瀬戸内国際芸術祭」は3年に1度開催されている。
 今年3月の開幕以来、連日大きなにぎわいを見せているこの芸術祭。その成功と共に「島とアート」という唯一無二の魅力を発信する、世界中を見ても希有なアートイベントだろう。
 10月5日(土)〜11月4日(月祝)までの秋会期開催にあたり、アートに包まれた島々を訪ねてきた。

 香川県高松港(または岡山県宇部港)からフェリーや高速船で各島へ。取材当日は台風直撃を心配するも、からりとした秋晴れに一安心。いざ、出発!

 港で草間彌生のカボチャがお出迎え。ここは、いち早くアートの島として有名になった直島だ。総称「ベネッセアートサイト直島」として、瀬戸内海の直島、豊島、犬島を舞台に株式会社ベネッセホールディングス、公益財団法人 福武財団が展開しているアート活動の拠点となっている。直島内のアート施設はほとんどが常設のため、芸術祭が過ぎても一年中楽しめるのがポイント。代表格は、地中美術館、李禹煥(リ・ウーファン)美術館、ベネッセハウス ミュージアムなど、すべて建築家・安藤忠雄の設計による美術館群。
 小さな島にこれだけの美術館が立ち並ぶ場所は、日本国内、はたまた世界中を見渡しても類を見ないだろう。

家プロジェクト「南寺」安藤忠雄(設計)写真:山本糾

家プロジェクト「南寺」安藤忠雄(設計)写真:山本糾

 同じく直島には、静寂に包まれた、昔ながらの家屋が立ち並ぶ本村地区がある。ここでは古民家をアート作品の舞台として利用した「家プロジェクト」と呼ばれる、「ベネッセアートサイト直島」の作品が点在している。
 なかでも、かつての寺を安藤忠雄の設計によって丸ごと改修した「南寺」における、ジェームズ・タレルの作品『バックサイド・オブ・ザ・ムーン』は必見だ。真っ暗な空間に誘われ、10分ほど暗闇を見つめているうちに、ぼんやりと前方に光が舞い込んでくるインスタレーション。自身の目がはっと光をとらえたその瞬間、「見える」という感覚を改めて感じることだろう。

 こうしたアートプロジェクトの進行に伴い、近年ではアート好きの若者による移住者も増え、近隣にアートギャラリーやカフェが生まれてきている。本村地区に10月オープンしたばかりという「エプロンカフェ」のお二人は、直島の魅力に惹かれてやって来た 東京からの移住組だという。

 島とアートをつなぐ数々の試みは、こうした若い人々を惹き付け、島に新たな活力をもたらしていることは間違いない。

 港でレンタルした電動サイクルで島をめぐっていると、思いがけない絶景に出合うことができる。言葉を失う景色に、この島々がアートと結びついた意味が理屈なしで見えてくる。

 

瀬戸内国際芸術祭2013 
秋会期:〜11月4日(月・祝)まで
http://setouchi-artfest.jp/

 

ベネッセアートサイト直島
http://www.benesse-artsite.jp

 

text & photo : Arina Tsukada

 


border