【うるおい女子の映画鑑賞】 第42回『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(2007年)
「女性」の視点で映画をみることは、たとえ生物学的に女性じゃなくても日常では出会わない感情が起動して、肌ツヤも心の健康状態もよくなるというもの! そんな視点から今回は『恋する惑星』等で’90年代に香港から世界にその名をとどろかせた映画監督、ウォン・カーウァイが手がけた初の全編英語作品『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(2007年)を紹介します。
歌手のノラ・ジョーンズを筆頭に、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、レイチェル・ワイズなど豪華キャストも話題になった作品です。
|ストーリー
恋人の浮気で失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)は、別れを受け入れられません。
元恋人の家の近所にあるカフェのオーナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)に合鍵を預け、断ち切れない彼への想いなどを話しているうちに、彼女はすこしずつ気持ちの整理をつけていきます。
やがて、ジェレミーとの間に淡い恋の予感漂ってくるのですが、それから目を背けるように、エリザベスはニューヨークを離れ漂うように旅に出ます。
|選ばれないのは「私のせいじゃない!」
元彼との恋の終わりに”理由”を求めるエリザベスにジェレミーは、閉店後に手付かずで残ったブルーベリーパイを見せてこんなようなことを言います。
「毎日アップルパイとチーズケーキは売り切れるけれど、ブルーベリーパイは丸ごと売れ残ってしまう。だけど、そこに理由はないんだ。ブルーベリーパイのせいではなく、注文がないだけ、選ばれないだけなんだ」
エリザベスはすぐに「1つ貰うわ!」とブルーベリーパイをオーダーし、そこにジェレミーがアイスクリームを添えると、その2つは溶け合っていきます。
|あなたは“ブルーベリーパイ”のような存在ですか?
エリザベスは世の中から忘れ去られたような田舎町を転々とするなか、2人の女性に出会います。夢見た人生とはかけ離れた、片田舎での陳腐な人生と折り合いがつけられずに暮らす女性。そして、父の愛が確かめたいのに疑ってはこじらせて素直になれないギャンブル好きの女性。
2人とも、すでに大切な人に十分に愛されているのに、自分のことが見えていないから、周りにある愛も見失っているのです。言い換えれば、そのままで十分魅力的で美味しいブルーベリーパイであるにもかかわらず、自分のことをチーズケーキやアップルパイだと思い込んでしまっているから、お客さんは満足しているのに「これじゃダメ!」と自分にダメ出しをし続けているのです。“理由”ばかりを探して…。
そんな2人の姿をみて、エリザベスはある決心をもってニューヨークへ戻ることにするのです。
きっとほとんどの女性が「自分はチーズケーキやアップルパイといったメジャーな存在(女優とかモデルさんとか、生きづらいくらいキレイな女性)ではなくブルーベリーパイのような存在なんだ」と感じているかも知れません。でもエリザベスが気づいたように、チーズケーキやアップルパイとの間に実は優劣はなく、何もブルーベリーパイだからと言って責められるべきところは本来ないのです。
雨が滲むような美しい気だるさが漂う『マイ・ブルーベリー・ナイツ』は、ブルーベリーパイのような私たち女性にそっと特別なアイスクリームを添えてくれるような、体と感覚のすべてを預けてしまえる包容力のある作品。疲れていたり、失恋の傷がうずくいたり、ひとりになりたい夜に寄り添ってくれるはずです(逆に意味を探したり、左脳で理論的に観ると映画の本質には触れられないので注意しましょう)。
text:kanacasper(カナキャスパ)
映画・カルチャー・美容ライター/編集者。編集を手がけた韓国のカリスマオルチャン、パク・ヘミン(PONY)のベストセラー メイクBOOK待望の第2弾『わたし史上いちばん”盛れる”♥ 秘密のオルチャンメイクⅡ』(Sweet Thick Omelet/DVD付/¥1,500・税別)が好評発売中
2017/06/12| TAGS: kanacasper
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