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知られざる魅力を発見【ルーヴル美術館】フランス政府公認ガイドと巡る“ナイトツアー”

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ルーヴル宮の歴史を学んで彫刻作品の鑑賞へ。すぐにアクセスできる古代ギリシャ美術、古代ローマ美術のエリアに向かいます。

 

▲エリアの入口には大きなスフィンクス像。ソレーヌさんによると「古い彫刻だけどルーヴル美術館に来たのは1820年代」とのこと

 

ソレーヌさんによると、彫刻作品を見るときに特に注目するべきポイントが、“ポーズ、“表情”、“身に着けている服や靴”の3つ。「それぞれがとても大切な意味を持っている」そうです。

 

▲「例えばこの作品は戦争の神様の彫刻ですが、とても穏やかな雰囲気なのが特徴です。作品を鑑賞するときは作品の背景や意味よりも、その作品をなぜ好きと感じるかが大切。まずは作品を細部までゆっくり見てください」とソレーヌさん

 

「それではこの作品を鑑賞してみましょう。特徴は何でしょうか?」

 

 

初めて見る作品で答えられずにいると「パッと見て周囲にある作品とどこか違う点があると思いませんか?」とソレーヌさん。「服が体に纏わりついているように見える」と回答すると、さらに「何ででしょう?」と問われ、「あーっ、水かぁ?!」と気付かされます。

 

 

「その通りです。ちょうど今水から上がってきたばかりの姿を表現した作品です」とのこと。「これを作ったアーティストは服の柔らかい生地感だけでなく、生地が濡れている感じをとても上手に表現しています。服に水が溜まって部分的に重くなっているところなんかまるで本物のよう。現代なら3Dプリンターで簡単に再現できそうですが、2,500年も昔に人の手で作られた彫刻と考えると感動しませんか?」とソレーヌさん。彫刻作品を鑑賞するヒントが少し掴めてきたように感じます。

 

続いて鑑賞するのは、かの有名な「ミロのヴィーナス」。

 

 

真っ白な大理石が使われていて、身体の曲線ラインなどのバランスも良く見た目の美しさからも人気の作品ですが、ソレーヌさんによると「最も重要なポイントはこの像がギリシャで発掘されたオリジナルということ」とのこと。ルーヴル美術館に収蔵されているギリシャのオリジナルの彫刻作品は「ミロのヴィーナス」と「サモトラケのニケ」の2点のみなのだそうです。

 

▲「サモトラケのニケ」はとにかく大きいサイズが特徴。ギリシャの文化の中でもこんなに大きな彫刻作品は珍しいそうです

 

続いて鑑賞するのは、ソレーヌさんが“フランス政府公認ガイド”の資格取得のために勉強をしている時に「一目惚れしてしまった」というこちらの作品です。

 

 

ソレーヌさんによると「この作品はフランスの文化にとってとても大切なもの」とのこと。16世紀にアンリ2世がローマの教皇パウロ4世からプレゼントされた狩の神様“アルテミス”をテーマにした作品で、フランスの代々の王様たちに大切にされてきて色々な場所で飾られてきたと言います。「ルーヴル美術館には大理石でできたオリジナル作品が展示されていますが、ブロンズなど様々な素材でコピーも作られています」とソレーヌさん。

 

“女性の強さ”を魅力的に表現した作品で、ソレーヌさんによれば「顔と身体の向きが違うという複雑なポーズと、服の繊細な表現に注目してほしい」とのこと。「服が風になびいて揺れている様子が細かく表現されています。一歩前に出した左脚の裾が少しめくれていてまさに今脚を踏み出したかのようで、横から見ると右脚には服がまとわりついていて、前から風が吹いてきているのがよく分かります。さらに後ろから見た時の風を含んだ裾の表現もとても美しいんです」

 

 

作品をよく観察すると、着ている服のデザインも単純にドレスにベルトというスタイルではなく、大きな生地を身体に何回も巻いて最後にベルトみたいに腰に巻いていて、模様の入った素敵な靴を履いています。最初に彫刻作品を鑑賞する上で“ポーズ、“表情”、“身に着けている服や靴”の3つが大切とソレーヌさんに教わりましたが、この作品は3つすべてが融合されたとても躍動感のある作品と言えるでしょう。

 

続いては「2つの面白い特徴のある作品」とソレーヌさんが語るギリシャの両性具有の神様・ヘルマプロディートスの彫刻です。

 

 

1つ目の特徴は「背中の方から見るとセクシーな女性に見えるけど、体の前側にまわって見ると男性であるということ」、そして2つ目の特徴は「ヘルマプロディートスが横たわっているマットレス」とソレーヌさん。

 

 

柔らかそうに見えるマットレスは「固くて冷たい大理石だということを忘れて、いつも横になってみたいと思ってしまうの」とソレーヌさんが言うように、本物のマットレスのようにフカフカな質感に見えます。

 

 

 

|ルーヴル美術館の知られざる魅力にさらに迫る


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