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怖いけれど可愛い鬼たちの世界【ホテル雅叙園東京】夏の企画展「和のあかり×百段階段2025」

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文化財「百段階段」の途中に設けられた7棟の宴会場では、角が生えた赤鬼や青鬼として現れるほか、動物や “もののけ” に姿をかえ、ときには光や闇でその気配を感じさせ、部屋によっては壮大な物語として語られます。

 

▲テーマは “異なる者”

 

最初の宴会場「十畝の間」の間では、人とは異なる者たちが出現。この建物が建てられた昭和10年は、大正ロマンの気風が冷めやらぬ華やいだ時代。ステンドグラスをはじめ、ノスタルジックで自由に満ちたしつらえの部屋。ところがいつのまにやら “もののけ” たちが入り込み、鬼たちが跋扈(ばっこ)する世界へと変貌します。部屋には写真には写らない真っ黒なこけしも置かれていました。

 

▲「漁樵の間」のテーマは “魂の声”

 

学問の神様として知られる平安時代の政治家であり、歌人でもあった菅原道真。都から太宰府へと左遷され、失意のうちに死去。その後京都に地震や火災、雷などで左遷にかかわった人々が次々に亡くなったことから道真の怨念として畏れられ、神として祀られるようになりました。青森のねぶた師・北村春一氏が制作した道真は、鬼と化して怒りとともに手から放たれる雷を表現。怒りに燃える色使いと鬼の形相が圧巻です。

 

▲続く草丘の間は「鬼の住処」がテーマ

 

迷宮のような鬼の住処となった「草丘の間」は、美しくも妖しい世界。林 貴俊氏が立体的に彩色した赤鬼と青鬼のこけしは阿吽を表現しています。東北地方にはこけしの名産地が点在していますが、東日本大震災で被災した石巻では林氏が2015年3月11日に創業。伝統的なデザインにくわえ、形にとらわれないモダンでユーモアあふれる “石巻こけし” を制作しています。

 

▲鬼を味方にした「鬼瓦」

 

鬼をもって鬼を制す。古くから各地で作られてきた鬼瓦。不幸を跳ねのけるにはさらに強い力を借りて、魔除けとして屋根の棟端につけるようになりました。1610年まで歴史をさかのぼる淡路瓦。兵庫県の伝統的工芸品「淡路鬼瓦」の指定窯元タツミが制作した鬼瓦を展示。時には職人の知恵と技術で、鬼の力を手なずけているんですね。

 

▲かんざし作家の榮-SAKAE-氏による作品

 

闇に光る提灯を背景に、繊細で美しいかんざしは、鬼たちが棲む世にも美と希望があるように思われます。

 

|鬼といえどもユーモアを


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