どんなまがまがしい存在であったとしても、そこに笑いやユーモア、時には可愛らしさまで添えてしまうのが日本人。ここにもそんな鬼たちが群れていました。
▲階段の途中にある踊り場に飾られた河童たち
「おやっ」とつい見入ってしまう可愛らしい表情の河童たち。古くから養蚕が盛んだった岩手県。昭和43年(1968年)に村田民芸工房が繭玉を使った郷土玩具を制作。河童伝説が残る岩手県らしい遊び心です。
▲静水の間は「百鬼夜行」がテーマ
鬼や妖怪の群れが夜の都を徘徊する「百鬼夜行」。見た者は死ぬと恐れられた魔群の彷徨です。林 貴俊氏のこけしは、様々な姿かたちをした鬼こけしたちが車に乗って暴走するユーモア満点の作品です。
▲可愛らしい鬼のフィギュア
鬼っ子たちの連作を描く日本画家の瀧下和之氏。ある日利き手ではない左手でなんとなく描いた鬼が気に入って、鬼たちを描きはじめた(憑りつかれた?)のだとか。今回は鬼の絵を展示するほか、鬼フィギュアで百鬼夜行を表現。ほかにも様々な鬼たちが「静水の間」にうごめいていました。
▲切り絵絵本作家のさぶさちえ氏の作品
印象的な動物たちの切り絵を得意とするさぶさちえ氏。「静水の間」と「星光の間」をつなぐ廊下には、近道をしようとして森に迷い込んでしまった動物たちの切り絵が飾られています。
▲「星光の間」は酒呑童子の物語
京都の北部に位置する大江山に棲んでいたとする鬼の頭領「酒呑童子」の、酒宴の様子を再現。中央手前の作品は、藍ならではの濃い色で美しくも妖艶な世界を表現。奥の赤い花は、枯れた盆栽に色をつけアップサイクルした枯吹(かぶく)盆栽です。一説によれば酒呑童子はたいそうな美男で、若い娘たちをかしづかせていたのだとか。写真右端の障子に映る人影、源頼光により成敗され、今回の展示会で繰り広げられた “鬼の世”は終焉を告げます。
|鬼たちが去った世界
文化財「百段階段」を上り続けた最後の2部屋は鬼が去った世界が舞台。特に6番目の清方の間には灯りがともり、新たな文化が花開き、ガラス細工やかんざし、ガラスランプなど、美しい工芸品が飾られています。
▲「清方の間」のテーマは桃源郷
美しい工芸品が並ぶ清方の間。注目は京都絵描きユニットだるま商店の『極彩色 目黒 山水 文雅抒情ノ末廣 花向ケノ宴 絵図』。人も鬼も宴に興じ、空には天女が舞い、婚礼が執り行われます。絵図の下中央はホテル雅叙園東京のエントランスと大屋根が描かれ、その左手には文化財「百段階段」と宴会場が連なるほか、館内の様々な様子も描き込まれているので、ぜひじっくりと見てください。
▲超細密!ビーズで作られた着物
ビーズアーティスト金谷美帆氏による、ビーズでできた絢爛豪華な着物。なんと165万粒のビーズを使った総ビーズ織りの和衣裳です。
▲螺鈿細工が施された漆の器に飾られるのは、つまみ細工
小さな四角い布を折り紙のように曲げ、花を作る「つまみ細工」。ホテル雅叙園東京や文化財「百段階段」を飾る漆工や螺鈿細工の修復を手がける安宅信太郎氏が制作した螺鈿の木箱に、つまみ細工の桃色の花がグラデーションを描いています。
▲99段目にある頂上の間は “現世の平穏” がテーマ
長く続いた鬼の世が終わり、ささやかな幸せが戻った「頂上の間」。山口県柳井市で毎年夏に行われる「柳井金魚ちょうちん祭り」。その金魚ねぶたが今年も登場。他にも新潟県長岡市の会社DI Paletteの「紙にしきごい」が部屋の中をフワフワと泳ぎ、ガラス作家の網野篤子氏が制作した美しい金魚のガラス細工が目を楽しませてくれました。
▲こけしさんの笑顔が平和
ゆっくりお風呂に浸かってスーパーリラックス。鬼のいない世の中を願う2025年の夏でした。
ホテル雅叙園東京で繰り広げらる「和のあかり×百段階段2025~ 百鬼繚乱~」。疫病や戦争、もののけや、ときには人の心の中に巣くう鬼。今回の展示会では、心がどこか浄化された気分になりました。夏の日の和の明りを、ぜひ体験してみてくださいね。<text&photo:みなみじゅん 予約・問:ホテル雅叙園東京 https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/wanoakari2025>
「和のあかり×百段階段2025 ~百鬼繚乱~」
期間:2025年7月4日(金)~9月23日(火・祝)※会期中無休 時間:11時~18時(最終入館 17時30分)※8月16日(土)は17時まで(最終入館 16時30分) 料金:一般 ¥1,800 / 大学・高校生 ¥1,200 / 小・中学生 ¥1,000(税込)
2025/07/21| TAGS: 2025夏
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