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目黒で怪談百物語【ホテル雅叙園東京】の幻想企画展「和のあかり×百段階段2022」

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日本を代表する老舗ホテル【ホテル雅叙園東京】の東京都指定有形文化財「百段階段」で毎年夏に開催される企画展「和のあかり」。7度目となる今年は、暑い季節を涼しく過ごす怪談百物語をテーマにした「和のあかり×百段階段 2022~光と影・百物語~」。幻想的なアートイルミネーションが、2022年9月25日まで開催されています。

 

|百段階段で行われる怪談百物語

 

東京・目黒にあるホテル雅叙園東京。昭和10年(1935年)に、敷地内の傾斜地を利用して7部屋の宴会場を99段の階段で繋げたのが、文化財「百段階段」です。ノスタルジックな雰囲気もさることながら、今回の企画展は豪華絢爛たる各部屋で、気鋭のアーティストたちによる夏の夜の夢を垣間見る機会です。

 

▲文化財「百段階段」を上る途中、もののけたちの気配を感じることも……

 

一連の展示は、夕暮れ時のエントランスからはじまって、階段を上るごとに夜が深まり、丑三つ時を超えて翌朝まで、物語をつむぐ構成になっています。サウンドクリエイターのヨダタケシ氏によるオリジナルBGM「Ayakashi」も部屋ごとに曲調を変え、歌手片山千穂氏のスキャットもミステリアス。そんな一夜の物語に沿って、光と影の展示が進みます。

 

▲展示会場のエントランスは夕暮れ時をイメージ

 

物語は夕暮れ時から始まります。山口県の「柳井金魚ちょうちん」のあかりがゲストをお出迎え。よく見ると、もう何かに取り憑かれている金魚が……。

 

▲プロムナードは3種類の風鈴の音色を楽しめます

 

プロムナードでは「江戸風鈴」の篠原風鈴本舗や、「小田原風鈴」の柏木美術鋳物研究所、富山県高岡の鋳物目メーカー「能作」の風鈴(写真)の音色を耳に“日本の涼”を楽しめます。

 

▲薄暮のあかりがテーマの「十畝の間」

 

日本画家の巨匠荒木十畝(あらきじっぽ)が花鳥図の天井画を手がけた「十畝の間」。日も暮れて、夜の入り口となる薄暮を照明作家の弦間康仁氏が表現。壁を覆う照明アートは木の蔓(つる)をイメージ。昼間は見えない影や、自然の中に潜む怪しさ、人里とは異質な森の生命力とを、光と影とでつむぎます。

 

▲光と影は表裏一体。会場の影にも注目しましょう

 

中央にあるのは松明(たいまつ)に見立てたモニュメント。床に映る蜘蛛の巣には、囚われた蝶とジワジワと近づく蜘蛛とが映ります。

 

▲「漁樵の間」を照らす竹のあかり

 

文化財「百段階段」7部屋のうち最も絢爛豪華と言われる「漁樵(ぎょしょう)の間」。床の間は菊池華秋の美人画、欄間は尾竹竹坡の五節句が浮彫された極彩色の部屋に、静岡市のアカリノワ「環・和・輪」が、放置竹林の竹を利用した「竹のあかり」を制作。竹から発する無数の光が、極彩色の室内を怪しくあでやかに照らします。

 

▲繊細な光が美しい竹灯籠

 

▲日本画家礒部草丘(そうきゅう)の手になる「草丘の間」では、歌舞伎の世界にみられる「恋の情念」を表現

 

歌舞伎の演目として知られる「牡丹燈籠」や「六条御息所」、「八百屋お七」など、男女の情念を描いた幽霊・生霊話をモチーフに、歌舞伎の世界を作りあげる松竹衣裳株式会社と歌舞伎座舞台株式会社が「草丘の間」を演出しました。

 

▲床のリフレクション効果でフォトジェニックな撮影も

 

▲八百屋お七(やおやおしち)の井戸。中を覗くと、背筋が凍る仕掛けも。スマホで自撮りすると超納涼感満点の写真が撮れますよ!

 

天和の大火(1683年)を逃れた16歳の八百屋の娘お七が、避難先の寺で小姓の吉三に恋をして、家に戻ったのちも吉三会いたさ一心で自宅に放火。火刑に処された悲恋は歌舞伎の題材として知られます。出家した吉三(後の西運)が、お七を供養するため身を清めた井戸跡が、いまもホテル雅叙園東京前に残っています。

 

▲身も心も涼しくなる江戸風鈴はドクロの絵柄

 

江戸風鈴の「篠原風鈴本舗」4代目・篠原由香利氏の作品。江戸風鈴は、ガラス内側からの絵付けが特徴。ドクロをよく見ると、江戸時代の浮世絵に見られる猫の寄せ絵(だまし絵)で描かれています。

 

|もののけが跋扈(ばっこ)する階段の怪談噺


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