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目黒で怪談百物語【ホテル雅叙園東京】の幻想企画展「和のあかり×百段階段2022」

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夜が更けるにつれもののけや魑魅魍魎(ちみもうりょう)、異界のモノたちが動き出す。昭和初期に建てられた各部屋と現代アーティストたちの作品が一体となる様も見どころです。

 

▲橋本静水が次の間の天井画と欄間絵を手がけた「静水の間」。テーマは「さかさまのあかり」

 

造形作家の中里繪魯洲氏が、樹と人間、馬と人間の立場をさかさまに置き換えて、夜の奥深く、見えることのない世界を表現。夢か幻かをただ心に問う静かな空間です。

 

▲怪しく光る妖怪提灯が「静水の間」から「星光の間」へと続く廊下や小部屋を照らします

 

福岡県八女市にある「伊藤権次郎商店」は、天保7年(1836年)より提灯の製造販売する、九州で最も古い提灯屋です。繋げた竹ひごを螺旋状に巻いた八女提灯には、骸骨や百鬼夜行が描かれ、怪しげな光と影を投げかけます。

 

▲美しい組子障子に映る化け猫の影。ネコ座敷と化した「星光の間」は真夜中のあかり、丑三つ時がテーマです

 

人が寝静まった丑三つ時。この世のものではないモノたちが集い宴会をしています。「壁抜け猫又」や「地中より生まれる」など、造形作家の小澤康麿氏が怪しげな猫たちをこの世に送り出しました。「星光の間」に飾られている作品はすべて購入可能です。

 

▲こちらをギロリとにらむ猫。ところが鏡には毛づくろいに夢中の猫が映ります。2本に分かれた尻尾とふたつの顔を持つ猫又です。飼い猫が老いて化けるとされますが、お宅の猫は大丈夫ですか?

 

▲アマビエをはじめコロナの時代をアートで表現

 

可愛らしくもシュールな猫の粘土造形を得意とする作家細山田匡宏氏は、コロナ禍をおぞましい生物として表現。商業利用されて今や瀕死のアマビエが「ニンゲンコワイ」とダイイングメッセージ。本当のもののけは、ヒトですか……。

 

▲猫を描く切り絵作家、松風直美氏の作品。超細密な切り絵は目が釘付けになりました

 

▲美人画の大家、鏑木清方が手がけた「清方の間」には、光と影を生み出す様々なジャンルの作品を展示。「いろした工房」のガラスランプが幻想的な光を放ちます

 

▲見る角度によって表情が異なる「行燈」 ※作品に触れることはできません。写真は作者の許可を得て持ち上げています

 

彫刻家オオタキヨオ氏が、京行燈をモチーフに3Dプリンターで制作した作品は、角度によって黒い塊に見えたり、光を透したりする不思議な立体物です。

 

▲炭で闇と光を表現

 

木材を炭窯で炭化させたあと、成形し磨き上げる炭化彫刻家ヒョーゴコーイチ氏。真っ黒な炭の表面には、光と影の木目が現れ、独特の質感が生まれます。手で触れられる見本もありました。

 

▲夏の風物詩・花火を細密な切り絵で表現する「かみはなび」

 

新潟に本社を置く印刷メーカー「第一印刷所」は、長岡 花火大会をモチーフにした「かみはなび」を展示。微細な切り絵加工された紙のパーツを組み合わせた立体造形です。

 

▲「清方の間」の一番奥に隠れるのは百物語最後の百話目に出現するとされる鬼女

 

百物語では、百話を語ると怪異が起こるとされ、九十九話で打ち止めが慣わしですが、百話目になろうとするとき、または百話目が終わるときに現れると伝え聞く鬼女「青行燈の幽霊」を、日本画家の園田美穂子氏が描きます。くっきりとした組子障子とはかなげな鬼女の姿が、現実とも幻ともつかないアンビバレンスな雰囲気をかもします。

 

▲文化財「百段階段」の最も奥にある「頂上の間」は、百物語を終えた“朝のあかり”がテーマ

 

夜と朝の狭間にある、夢うつつなまどろみの世界を「生け花 古流かたばみ会」の次期家元・大塚理航氏が大胆に表現。風をイメージした反物や光を表す球体、オリジナルのアロマの香と窓の外の緑とが清々しさを演出。窓外の雰囲気が天候や時刻によって変わるため、何度でも観ておきたい作品です。

 

▲無限に続くフラクタルな世界を生み出すアーチスト石井七歩氏の「血の花の血」

 

幽霊のように存在感の薄い透明な着物に、血を思わせる赤い花が増殖する生命を感じる作品。足元には枯葉が盛られたお膳が並び、狐に化かされたような、遠い記憶を呼び覚ますような、不思議な料理が盛られます。

 

▲大塚理航氏によって床の間に置かれた苔梅は、白と赤紫のご神木のように飾られて、日々不安な世の中で生きる私たちに希望をともしたいという願いが込められます

 

▲文化財「百段階段」のミュージアムショップでは、今回の企画展にちなんだ江戸風鈴やガラスランプなどを販売

 

▲館内にある「招きの大門」にも作品が飾られ、幻想的なあかりが広がります

 

【ホテル雅叙園東京】の文化財「百段階段」で行われる怪談百物語。酷暑と言われる今年の夏こそ“あやかし”の世界をのぞいてみてくださいね。<text&photo:みなみじゅん 予約・問:ホテル雅叙園東京 https://www.hotelgajoen-tokyo.com/


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